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#06 多様性を尊重する保育とは?

子ども教育学部 子ども教育学科 講師
德留 由貴
研究分野:保育学

子ども教育学科の德留 由貴 講師は、一人ひとりの違いを認め合いながらともに育ち合える保育を目指す「インクルーシブ保育」の考えのもと、それを保育現場で具現化する方法や、課題となる制度や環境について研究を進めています。

 

現在の研究について教えてください

昨今、保育・幼児教育現場に在籍する障がい児数は年々増加傾向にあり、その他にも虐待を受けている子ども、外国にルーツのある子ども、医療的ケアの必要な子どもなど、子どもの支援ニーズが多様化しています。また、そうした支援を要する子どもがクラスに半数以上在籍するケースも見られるようになり、そのような状況の中で、一人ひとりの子どものニーズに応えつつ、共に育ち合える集団の関係性を保障していくことは保育・幼児教育現場の課題となっています。

私の研究は、この「多様性」に加えて、支援ニーズのある子どもたちがクラスに「複数化」している現状に着目し、そうしたクラス集団のなかで、一人ひとりの子どもが尊重される保育のあり方とは何か、を探求していくことにあります。こうした目的と関連して取り上げているのが、「インクルーシブ保育」です。「インクルーシブ(inclusive;名詞はinclusion)」には、「包み込む・包括的な」という意味があります。そこには、これまで保育・教育現場から排除(exclusion)されてきた人たちの存在を認め、障がいの有無等にかかわらず、一人ひとりが違っていて当たり前であること(=多様性)、そして「支援が必要でない子どもはいない」ということを前提に、ともに育ち合える保育を目指して、変革していくという考えがあります。こうした「インクルーシブ保育」の考えをもとに、上記のようなテーマに取組んでいます。
現在は、多様な支援ニーズのある子どもたちが在籍するクラスを担当経験のある保育者の方々にインタビューを行ったり、実際に保育現場に入り保育に参加したりするなかで、その援助プロセスや子ども及び集団の変化について分析・考察しています。
また、上記のような研究をもとに、今後は北欧の保育、特にフィンランドにおける保育の研究を通して、「インクルージョン」が実現される保育のあり方を検討したいと考えています。フィンランドは移民の受入数や特別支援教育対象児数が増加するなど、様々な支援ニーズのある人々が共に生活する状況にあり、その中 6 年連続で「世界一幸せな国」(2023 年 3 月 20 日発表)に選ばれています。そのフィンランドにおける多様性を尊重する保育の在り方を調査し、日本の保育と照らし合わせることによって、「インクルージョン」が実現される保育のあり方を多角的に捉え、日本における保育の質向上を目指したいと考えています。
 以上のような研究や活動が保育・幼児教育現場の子どもたちや保育者、保護者の方々の一助になればと考えています。

このテーマで研究を始めたきっかけや、経緯を教えてください

現在の研究に至ったきっかけは、大学生時代にまで遡ります。当時の私は、保育者になることを夢見て、保育士資格と幼稚園教諭一種免許状の取得できる大学に入学しました。保育に関する講義や演習は、私にとってどれも魅力的だったのですが、とある授業のなかで聞いた、当時保育・教育現場において話題となっていた「荒れる」・「キレる」子ども、「気になる子ども」と保育をテーマにしたお話は特に衝撃的だったのを覚えています。

例えば、そこで紹介された子どもたちの「死にたい。どうせ俺が死んでも誰も悲しまん」「どうせ俺のことなんかわかってくれない…」(出典:宮里六郎(2001)「荒れる子」「キレル子」と保育・子育て.かもがわ出版)という言葉や他者を攻撃することを止められない姿は、当時の私には想像し難く、その背景にある思いを考えるととても辛いものがありました。一方で、こうした事例は特殊なものなのだろうと、どこか他人事のように感じていたようにも思います。

しかし、その後の教育実習でそうではないことに気付かされる、ある出来事がありました。教育実習初日、少しの不安と楽しみとを胸に 5 歳児クラスの教室に入り、私のことをすんなり受け入れてくれる子どもたちに安心していた矢先、ベランダで数名の子どもたちと遊んでいると、後ろから「ドンッ」という背中への衝撃とともに気づいたら 3 段あった階段から落ち体が砂まみれになっている自分に気がつきました。「え?今何が起きたの?」と思ってベランダを見ると、「ニヤッ」と笑みを浮かべる男の子(以下、A 君とします)が一人。こちらの視線に気づくとすぐに部屋の中に入ってしまい、その時は突然のことにその場を誤魔化すことしかできませんでした。その後も自分で作ってきたお弁当を A 君にひっくり返され、危うくお弁当が食べられなくなるところだったこと等… 衝撃的な出来事が続きました。「なぜ、相手が困るような行動をとるのだろう」とその時の私は A 君の言動が気になり、その後の実習では主に A 君の姿を追っていたように記憶しています。そして、その観察や A 君との関わりの中でわかったことは、そうした「困った」行動は、私にだけではなく、他の子どもたちとの関わりにおいても見られていること、それが関係してか、他児と上手く関係を作れていなかったこと、女の子とのごっこ遊びのなかでは穏やかに過ごしている姿が見られたこと等、A 君自身、実は他の子どもとの関わりを求めてはいるけれども、上手く関わることができず、A 君自身が「困っていた」ということでした。

この A 君との出会いをきっかけに、支援を要する子どもの保育について関心を抱き、教育実習後は、教授と相談しながら、保育や子育て支援に関するボランティアに参加したり、保育現場で調査研究をさせていただいたりと支援児と他児 / 集団の関係づくりや保育者の援助について学べる機会をつくり、その過程で得た「もっと学びたい」「もっと知りたい」という思いが、現在の研究テーマや職に進むきっかけとなっています。

研究を通して、今どのような課題や成果が見えていますか?

現在の研究を通して、従来の保育方法では立ち行かなくなり、保育困難な状況に陥ってしまう保育者がいる中、保育者が自身の保育観や保育実践を見直しながら保育を組み立て直していくプロセスがわかってきました。そのなかで見出された要因の一つひとつが子どもたち一人ひとりの育ちや子ども同士の関係性をどう繋いでいたのか、今回得られた結果を再度、保育・幼児教育現場に返しながら、さらに理論を深めていきたいと考えています。

また、現在保育者養成にかかわりつつ、研究に取り組んでいますが、私自身の取り組みたいことはもう一つあります。それは、保育・幼児教育現場に入りながら、保育者と目の前の子どもや保護者、保育についてともに考える伴走者になることです。現在は上記の研究に取り組みつつ、保育現場に入りながら、保育者の方々の実践を踏まえて、一緒に保育を考えたり、支援を要する子どもへの保育に対する助言を行ったりしています。私が保育者として保育現場に入らず、現在の道を選択した理由はこのためです。まだまだ半人前で、助言などと偉そうなことを言っていますが、実際には学ばせていただいている、という表現の方があっていると思います。現場に密着しながら、そこで学んだことを自分なりに可視化し、再度お返していけたらと思っています。

高校生、大学生のみなさんへ

私自身の将来を変えるきっかけは、大学の教授との出会いであり、実習先での出会いであり、その後も進む先々で様々な方や出来事との出会いがあり、現在に至っています。高校生のみなさん、大学生のみなさんはこれからどんな人と出会うでしょうか?どんな出来事に遭遇するでしょうか?そこで出会った人や出来事は良いことも悪いことも含め、みなさんが考える、行動するきっかけをつくってくれます。そして、その一つ一つがみなさん自身を育てる糧になることでしょう。ただし、そうしたきっかけの多くは、行動の先に生じます。もしかしたら、何も起きないかもしれません。ですがそれは動かないとわからないこと。これって当たり前のことなのですが、でもこの行動するって結構難しかったりもします。そもそも何をすれば良いかわからない、取り組んでいても途中で先が見えなくなってやめちゃう… ということってありますよね。

私にとっては、この場合次のことが支えになっていました。
それは保育について語り合える仲間ができたことです。この仲間とは、大学時代でいうと、大学の「ゼミ」を通じて出会いました。この「ゼミ」は、保育者(もしくは学生)の書いた実践記録や場面記録の検討、研究会(保育者が集い実践検討や保育の情報交換をしていました)の参加、保育園訪問を主な活動とし、様々な保育者や保育実践に触れ、議論することを大事にしていました。こうした経験が、現在の私自身の保育観にも繋がっていると思いますし、考えの異なる相手と対話する心地よさを知ることができた時間でもありました。こうした仲間と過ごす時間が「知る」こと「学ぶ」ことへの意欲を掻き立ててくれたのだと思っています。それは「仲良し」な誰か、ではなく、違いや発見を一緒に楽しめる誰かです。そんな誰かと時間・経験・考えを共有しながら、大学生活を豊かにしてもらいたいと思います。
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